第2回 原子力発電の燃料を学ぼう!
① 原子力発電の燃料
原子力発電の燃料には、核分裂を起こしやすい「ウラン235」という物質を使っています。
「ウラン235」は、カナダやオーストラリアなどの鉱山で採れる天然ウランに含まれていて、その含有量はわずか0.7%。このままでは燃料として使えません。
そこで、専用の工場で含有量が3%から5%になるまで濃度を高めます。このことを「濃縮(のうしゅく)」といいます。
濃縮された後は、小さく固めて1センチほどのペレット状にし、長さ4メートルほどの燃料棒に入れて使います。
② 沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の燃料集合体
「燃料集合体」は、ウラン燃料(ぺレット)が充てんされた燃料棒を、1体あたり、沸騰水型原子炉(BWR)用では50~80本程度、加圧水型原子炉(PWR)用では200~300本程度束ねたものです。
また、「制御棒(せいぎょぼう)」は、ホウ素やカドミウム等の中性子を吸収しやすい物質で作られており、制御棒を出し入れすることにより原子炉内の中性子の量を調整し炉心(ろしん)の出力をコントロールします。
出典:エネ百科「原子力・エネルギー図面集」
③ ウラン燃料は少しずつ変化する
原子力発電所の原子炉で使われるウラン燃料は、一度原子炉にセットすると長く使い続けることができます。ただし、だんだん燃料は変化していき、最初、3%から5%含まれている核分裂しやすいウランは、3年ほど使用すると1%程度まで減って、核分裂が起こりにくくなります。
このため、定期検査のときに、1/3から1/4程ずつ交換しています。
④ ウラン燃料のリサイクル利用(核燃料サイクル)
3年程度の間、発電に使われた燃料は取り出されますが、使用済燃料には、核分裂せずに残ったウラン235やウラン238、そして新たに発生したプルトニウム239が合わせて95~97%含まれています。
このウラン・プルトニウムを再処理「再処理の工程参照」という工程で回収し、混合酸化物燃料(MOX燃料、Mixed Oxide Fuel)とすれば、再び原子力発電所(軽水炉)で使用(プルサーマル)することができます。
しかし、どうしても再利用できないものは、ガラスと一緒に固めて地下深くの安全な場所に処分する計画となっています。この一連のサイクルを「核燃料サイクル」といいます。
【製錬】鉱山からウラン鉱石を採掘して、化学処理を行い、八酸化三ウラン(U₃O₈)を取り出します。このときの状態をイエローケーキといいます。さらに不純物が取り除かれます。日本では、この工程を海外に委託しています。
【転換】濃縮のために、イエローケーキを六フッ化ウラン(UF₆:56.5℃で固体から気体へ昇華)にします。日本は、この工程を海外に委託しています。
【濃縮】ウラン235の濃度を天然の状態の約0.7%から、軽水炉での使用に適した3~5%に高めます。気体状態の六フッ化ウラン(UF₆)を、高速回転中の遠心分離機に入れると、遠心力により重いウラン238が外側に、軽いウラン235が内側に分離されます。
日本では、青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)が濃縮事業を行っていますが、国内需要の大半は、海外に委託しています。
【再転換】燃料として成型加工するために、UF₆を酸化物(UO₂:二酸化ウラン)にします。日本では、茨城県東海村にある三菱原子燃料(株)が再転換事業を行っていますが、海外にも委託しています。
【成型加工】UO₂の粉末を焼き固めてペレットとし、燃料集合体に加工します。日本では、この工程の大半を国内のウラン燃料成型加工会社が行っています。
⑤ 再処理の工程
【受入れ・貯蔵】再処理工場へ運び込まれた使用済燃料は、輸送容器(キャスク)から取り出され、燃料貯蔵プールで冷却・貯蔵されます。
【せん断・溶解】硝酸を入れた溶解槽に細かく切断した使用済燃料を溶かし、燃料部分と被覆管部分に分別します。燃料を溶かした硝酸溶液は分離工程へ送られ、溶け残った被覆管などの金属片は固体廃棄物として処理されます。
【分離】硝酸溶液をウラン・プルトニウムと核分裂生成物に分離します。さらに、ウランとプルトニウムも分離し、精製工程へ送られます。
この工程で分離された核分裂生成物を高レベル放射性廃棄物といいます。これらは溶融炉の中で溶かしたガラスと混ぜ合わせ、ステンレス製容器(キャニスター)に流し込み、冷やし固められます(ガラス固化体)。
【精製】ウラン溶液、プルトニウム溶液の中に含まれている微量の核分裂生成物を取り除いたものが脱硝工程へ送られます。
【脱硝・製品貯蔵】精製されたウラン溶液、プルトニウム溶液から硝酸を蒸発・熱分解させ、ウラン酸化物粉末とウラン・プルトニウム混合酸化物粉末(MOX粉末)にします。それぞれの粉末は、燃料加工施設などに運ばれるまで貯蔵されます。
⑥ 放射性廃棄物
【原子力発電所から発生する放射性廃棄物】原子力発電所からは、気体状、液体状、固体状の放射性物質が発生します。
建物の換気をした空気などの気体は、フィルターなどを通して放射性物質をできるだけ取り除きます。その後、放射性物質の濃度を測定し、基準以下であることを確認して大気中へ放出されます。
洗濯の廃液など液体状のものは、ろ過や蒸発濃縮などをしたうえで、蒸留水は再利用するか、放射性物質の濃度を測定し、安全を確認して海へ放出されます。
紙や布などの固体のうち、放射性廃棄物として扱う必要があるものは低レベル放射性廃棄物として扱われます。低レベル放射性廃棄物は放射能レベルに応じて以下の三つに分けられ、それぞれ図のように処分されます。
・放射能レベルの極めて低い廃棄物:コンクリートや金属
・放射能レベルの比較的低い廃棄物:濃縮廃液、紙、布、イオン交換樹脂など
・放射能レベルの比較的高い廃棄物:制御棒、炉内構造物など
【高レベル放射性廃棄物】再処理工場では、原子力発電所の使用済燃料から再利用できるウランやプルトニウムを回収した後に、核分裂生成物を主成分とする放射能レベルの高い廃液が残ります。
この廃液は、高温で溶かしたガラス原料とともにステンレス鋼製の容器(キャニスタ)に入れ、冷やして固め、ガラス固化体とされます。これが、高レベル放射性廃棄物です。
日本では、ガラス固化体を30〜50年程度、一時貯蔵して冷却した後、最終的に地下300mより深い安定した地層中に処分することを、基本方針としています。
高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが十分低くなるまで、数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があり、その最も確実な方法として地層処分が採用されました。
ガラスは水に溶けにくく、化学的に安定しているため、長期間にわたって放射性物質を閉じ込めるのに優れています。地下深い層は、石油や石炭、鉄などの鉱床が何百万年、何千万年にわたって安定した状態で保存されてきました。また、酸素濃度が低く、地下水の動きもゆっくりしているため、金属の腐食は極めて遅くなります。こうした安定した岩盤などの「天然バリア」と、厚い金属製容器や緩衝材(粘土)といった「人工バリア」を組み合わせた「多重バリア」を構築して、安全に処分をすることとしています。
参考:エネ百科「原子力・エネルギー図面集」
本文の一部は原子力総合パンフレット(日本原子力文化財団発行)を出典としています。
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