あともすラボ

第1回 原子力発電のしくみについて考えよう!

① 原子とは?

原子とは、科学的性質を保って、これ以上分解できない一番小さな粒子です。
私たちの身の回りにあるものは、すべて原子が集まってできています。
原子の中心には原子核があり、その周りをいくつかの電子が飛び回っています。

原子とは?

② 原子の大きさ

原子の大きさは1m(メートル)の100億分の1。0.1nm(ナノメートル)という大きさです。例えば、原子とピンポン玉の大きさを比べるということは、ピンポン玉と地球の大きさを比べるのと同じことになります。

原子の大きさ

③ 身近なところでパワーを発揮する原子

原子の中には、「原子核」というものがあり、この「原子核」が分かれたり、くっついたりしたりする時に、大きなエネルギーが出ます。
このエネルギーのことを「原子力」と言います。

身近なところでパワーを発揮する原子01

「ウラン」という物質を知っていますか?
このウランの原子核に、中性子という粒がぶつかると、「核分裂」という反応が起こり、原子核が二つに割れ、同時にたくさんの熱エネルギーが出ます。

身近なところでパワーを発揮する原子02

また、新たに発生した中性子が他のウラン235にぶつかり、核分裂が続くことを「核分裂連鎖反応」といいます。この核分裂連鎖反応が一定の割合で起きている状態のことを「臨界」といい、原子力発電所では出力を一定に保つため、中性子の数をコントロールしながら、この臨界の状態を維持し発電を行っています。

④ 原子力発電所のしくみ

火力発電所が石油や石炭を燃やしたときに出る熱でお湯を沸かし、その蒸気でタービンを回して電気を起こしているのに対し、原子力発電所では、ウランの核分裂で出た熱エネルギーでお湯を沸かして、その蒸気でタービンを回して電気を起こしています。

原子力発電所のしくみ01
原子力発電所のしくみ02

また、原子力発電所には、ウランの核分裂を行う原子炉という施設があります。これは火力発電所のボイラーにあたります。原子炉には、核分裂の数をコントロールし、安全に運転することができるよう、最新の建設技術が使われています。また、使い終わったウラン燃料は、再利用することができます。

原子力発電所のしくみ03

⑤ 原子炉の種類

原子炉には、冷却材として軽水(けいすい)=普通の水を使う「軽水炉」のほかに、重水(じゅうすい)を使う「重水炉」、炭酸ガスやヘリウムガスを使う「ガス冷却炉」などがあります。
現在、日本にある商業用の原子力発電所は、すべて「軽水炉」です。軽水炉は、世界の原子力発電の中心にもなっている原子炉で、沸騰水型原子炉と加圧水型原子炉の2種類があります。

原子炉の種類01 原子炉の種類02

出典:エネ百科「原子力・エネルギー図面集」より作成

⑥ 原子力発電所の構成

【原子炉建屋】原子炉建屋は、原子炉圧力容器およびこれを納める原子炉格納容器などから構成されています。地震の影響を少なくするため、岩盤の上に作られた丈夫な人工岩盤の上に直接建てられています。

【タービン建屋】タービン建屋は、原子炉で作った蒸気を当てるためのタービンや、電気を起こすための発電機、タービンをまわし終えた蒸気を水に戻すための復水器などから構成されています。

【使用済燃料プール】使用済燃料からは、核分裂により生まれた核分裂生成物から崩壊熱が発生するため、使用済燃料プールに入れ、プールの水で冷却されています。

【原子炉圧力容器】ウラン燃料の核分裂を制御しながら、発生する熱を取り出す水と蒸気の高い圧力に耐える鋼鉄製の容器です。火力発電所のボイラーに相当します。

原子力発電所の構成

出典:エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

原子炉の種類01 原子炉の種類02

⑦ 原子炉圧力容器内の構成

【燃料集合体】燃料のペレットを被覆管(ひふくかん)という長さ4mほどのジルコニウム合金製の「さや」に密封して燃料棒とし、それらを数十本から数百本束ねた燃料集合体が原子炉の中に装荷されています。燃料集合体の大きさや装荷される燃料集合体の数は、原子炉の種類や発電出力によって異なります。
また、ウラン燃料は、発電に約3年間利用され、約1年に1回の定期検査の際に新たな燃料と交換されます。一度に交換するのは、炉心全体の3分の1から4分の1ほどです。(Vol2で詳しく紹介しています)

原子炉圧力容器内の構成01

【制御棒と出力制御】制御棒を出し入れすることで、核分裂の量を調整して発電出力を制御しています。核分裂で発生した中性子が、ウラン235の原子核にあたって、次々に核分裂を起こすため、制御棒は、中性子を吸収しやすいホウ素やカドミウムなどの物質が含まれています。不具合が生じた場合でも、対処できるように多数の制御棒が備えられています。

原子炉圧力容器内の構成02

【原子炉冷却材】】炉心は、燃料と制御棒などで構成され、水で満たされています。
水は、核分裂によって発生した熱を炉心から外部へ取り出す冷却材と、核分裂でウランやプルトニウムから発生した中性子の速度を遅くし、次の核分裂を起こしやすくする減速材(げんそくざい)としての役割を果たしています。

原子炉圧力容器内の構成03

⑧ 原子炉を冷却する非常用設備

【非常用炉心冷却装置(ECCS)】原子炉内にある冷却材(水)を注入する配管が破断(はだん)した場合に、非常用炉心冷却装置(ECCS)という安全システムが作動します。原子炉内の燃料は、核分裂の連鎖反応が停止した後も、まだ核分裂生成物から発生する熱(崩壊熱)が残っています。その熱で、原子炉の冷却材が失われないように、ECCSが作動し、冷却されます。
また、原子炉格納容器を保護する格納容器スプレイは、圧力抑制室内などの冷却材をスプレイし、格納容器内の温度や圧力を低下させるもので、浮遊する核分裂生成物を除去する役割もあります。

原子力発電所の構成

出典:エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

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本文の一部は原子力総合パンフレット(日本原子力文化財団発行)を出典としています。
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